『Chosen Lords』AFX レビュー

電子音のマエストロ

アナログ12″のみでリリースされていた、11枚全41曲の『Analord』シリーズから10曲をセレクトしてCD化したのが本作『Chosen Lords』だ。リチャード・D. ジェイムス(本作はAFX名義)の実質的なニューアルバムと位置付けていいだろう。

本作は、エイフェックス・ツインの名作『Selected Ambient Works 85-92』を思い起こさせるピュアなエレクトロミュージックに仕上がっている。微妙なフィルターの開閉や、細かい音の抜き差し、突発的で目の覚めるようなパニングなど、ヘッドフォンで聴き込んでも楽しめるリスニング・テクノになっている。

リチャード・D. ジェイムスの作る曲は美しい反面、ときに悪意さえ感じさせるトゲがある。しかし本作には、そういったささくれ立った気分を感じさせる瞬間に乏しく、物足りなく感じるファンも多いかもしれない。けれども何処か不穏な空気感は相変わらずで、一筋縄では行かない奥深さは残っている。「シンセとシーケンサーをいじるのが楽しくてしょうがない」という風情も変わりなく、その初期衝動をいまだに感じさせるのが、リチャード・D. ジェイムスが天才と称される所以だろう。

ビートは音源のプリセット音をそのまま使ったようなスタンダードな音で組まれているし、リチャードにしては珍しいストレートな四つ打ちの曲まである。音響もアナログ感のある、耳にやさしいものになっている。全体的に聴きやすい作りになっている『Chosen Lords』は、リチャード・D. ジェイムス作品の入門用に良いかもしれない。そして本作を気に入ったなら、更に深遠な他作品まで手を伸ばして欲しい。

評点(10点満点)

【7点】初期作品のような「ひらめき」に欠けるか。

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