『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』レビュー

コインの表裏

本国アメリカと日本での温度差が激しい、映画『X-MEN』シリーズ。しかしこのシリーズは、ヒーローと悪役の2人前後しか通常登場しない“超人”が多数登場する、バラエティに富んだ面白さがある。日本で大きくヒットしないのが口惜しく感じるくらいの良シリーズなのだ。

───時は1962年。米ソ間の緊張は限界寸前まで達していた。テレパスの能力があるミュータントのチャールズ・エグゼビアは、開戦を企み陰で糸を引く存在に気が付き、阻止しようとするが───

『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』は、映画『X-MEN』シリーズ初期3部作の前日譚だ。主人公は、若き日のプロフェッサーXとマグニート。友情で結ばれていた2人が決別に至った真相が遂に明らかになる。

そのいきさつをキューバ危機に絡めてスリリングに描いているのが本作の肝だろう。リブート後の『バットマン』と『007』に影響されたと思わしき作風で、焦点は人間性に合わされ、シリアス寄りになった。

この持ち味の変化によって、キャラクターが今までよりも身近に感じられ、感情移入しやすい。なかでも後のマグニートーであるエリック・レーンシャーには、すっかり惹き込まれた。

地味に思えるキャスティングの印象も、エリックを演じるミヒャエル・ファスベンダーの魅力で覆るだろう。ヒュー・ジャックマンのような華やかさはないが、新シリーズの主役にふさわしい配役である。

このキャストの『X-MEN』をもっと観たい。本作を1作目とする新3部作の構想があるようなので、是非実現して欲しいところだ。

人間ドラマ一辺倒ではなく、アクションの要素も当然のごとく盛りだくさん。監督のマシュー・ヴォーンによるアクションの見せ方は、ブライアン・シンガーには劣るが、ブレット・ラトナーより勝っている。『ファイナル ディシジョン』と比べて遥かに良い。

ミュータントの特性の見せ方が巧いので、どの能力が欲しいか語り合いたくなる。鑑賞後に話したくなる要素があるのは良作の証拠だ。

前日譚としても優秀で、過去作に絡めた小ネタが随所に仕込まれていて、楽しませてくれる。本作だけでも理解できる作りであるものの、やはり初期3部作の鑑賞は必須だろう。それゆえに多少ハードルが高いが、超える価値が有る映画である。

評点(10点満点)

【7.5点】良質なアメコミ映画。

ネタバレ

(注) ここ以降は本作のネタバレがありますのでご注意ください。

チャールズの豪邸(後の“恵まれし子らの学園”)を見たエリックのリアクションが二人の関係性を端的に象徴していた。チャールズとエリックは、大人になるまでに見てきたものがあまりにも違うのだ。

チャールズの根幹にある性善説は、金銭的に何不自由ない環境が育んだものだろう。確かにチャールズは理性的で善人だが、ときに理想論に偏りがちで、浮世離れした面もある。

一方で、苛酷な子供時代を過ごしたエリックが、人を無条件では信じられないのも無理もない。しかしその分、現実的で情熱的だ。

チャールズがレイブン(ミスティーク)を一歩引いた目線から、彼女の環境や将来を含め見ていたのに対して、エリックはその時点での彼女そのものを見ていた。2人とも強力なリーダーシップを持つが、その資質はまるで異なっている。

惹かれあっていたチャールズとエリックが袂を分かち、そしてレイブンがエリック側を選ぶ決断が、自明なものとして描けていた。

チャールズが車椅子に乗る原因がエリックにあるのは、意外な真相として驚きがあるのは勿論のこと、エリックが後戻りできない意味づけにもなっていた。原作とは異なるらしいが、これは巧いエピソードだ。

セバスチャン・ショウの跡とヘルメットを、彼を憎んでいたエリックが継ぐことになる、皮肉で悲しい結末だった。

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