『Vフォー・ヴェンデッタ』レビュー

超現実によって浮き彫りにされる現実

───第3次世界大戦後、独裁国家と化したイギリス。秘密警察に捕まったイヴィー(ナタリー・ポートマン)は、"V"を名乗る仮面の男(ヒューゴ・ウィービング)に救われる。"V"は、恐怖政治に圧制された国民を暴君の手から解放しようとしていた───

アクション映画のマイルストーンになった『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟が製作と脚本を手掛けた新作と聞いたら、観ないわけにはいかないだろう(監督はジェームズ・マクティーグ)。あれほどの作品の後にどんな作品を作るのだろうと、興味津々で鑑賞したのだが、『Vフォー・ヴェンデッタ』は期待を裏切らない、なんとも大胆不敵で挑戦的な映画に仕上がっていた。

まず、『Vフォー・ヴェンデッタ』はアクション映画ではない。アクションシーンは述べ10分程度で、残りの時間は濃厚なドラマが繰り広げられる。そのストーリーは単純な勧善懲悪ではなく、主人公の"V"もいわゆる正義のヒーローではない。アメコミ映画の宿敵として登場しても、おかしくない人物像だ(本作はイギリスのコミックが原作)。9.11以降のアメリカで、革命家とテロリストの境界線にいるようなキャラクターを主人公に据えるあたりは、挑戦的という他ないだろう。そのせいか、アメリカでの批評家受けは悪かったようだ。だが、独善的な正義を振りかざす映画より、はるかに有意義な作品になっている。

賛美両論があるようだが、それこそが本作の狙いでもあるだろう。劇中で何度も語られ、本作のモデルにもなっている実在の人物ガイ・フォークス(脚注)も、たんなる罪人と見る人もいれば、英雄視されることもあるようだ。

ときに善と悪は表裏一体である人間社会を、漫画的でありながらも、現実味を失わない絶妙なバランス感覚で風刺する『Vフォー・ヴェンデッタ』は、単純な商業主義作品とは一線を画す骨太な一本だ。

評点(10点満点)

【7.5点】おきらくなアクション映画を期待して観ると、面食らうことになる。

脚注

ガイ・フォークス

ガイ・フォークスとは、1605年にイングランドのウェストミンスター宮殿爆破を企てた一味の一人である。本作の理解を深めるためには、ガイ・フォークスに関する情報が予備知識として必須だろう。特にこれから観る人は、ガイ・フォークス - Wikipediaを通読してから観賞することをお薦めします。

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監督:ジェームズ・マクティーグ
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