『恋愛睡眠のすすめ』レビュー

恋と眠りの化学反応

プロモーションビデオ界の鬼才として名を馳せていたミシェル・ゴンドリーは、映画『エターナル・サンシャイン』を一大傑作に仕上げ、奇抜な映像だけではなく、物語を撮る手腕もあることを証明した。そんなミシェル・ゴンドリーの待望の新作、それも彼が始めて脚本も一人で手掛けた映画が『恋愛睡眠のすすめ』である。

───現実と夢の区別がおぼつかないステファン(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、父の死をきっかけにメキシコから母のいるパリへ帰郷する。しばらくしてアパートの隣室にステファニー(シャルロット・ゲンズブール)が引っ越してきて───

ステファンが見る夢のビジュアルは、独創的で、想像力の爆発だ。それらを観ていると、まるでミシェル・ゴンドリーの頭の中を覗いていような感覚に陥る。さしずめ『ミシェル・ゴンドリーの穴』といったところか。そんな印象を受けるのは、『恋愛睡眠のすすめ』がゴンドリーの感情に寄り添った、とてもパーソナルな作品だからだろう。

本作では、夢の世界の表現方法としてストップモーション・アニメが多用されている。それらは、昨今の完全に管理されたスムーズな動きではなく、ぎこちなさを残した昔ながらの味があるものだ。その特異な動きは、普段は使わない脳の辺境をくすぐられるようで、あたかも本当に夢を見ているような心地にさせてくれる。

かのように映像面では十分に楽しめるが、物語性の部分では若干の不満を覚えた。チャーリー・カウフマンが脚本を手掛けた前監督作の『エターナル・サンシャイン』と同じく、コミュニケーション不全を描いているが、そこから生まれる悲哀が本作には欠けている。そのぶんハッピーな感覚に満ちているが、その幸福感を生む源であるはずのヒロインの感情がないがしろにされている為、観客の感情が帰着するべきポイントが曖昧ですっきりしない感がある。

ミシェル・ゴンドリーは、インタビューで冗談交じりに「(この映画を観て)女の子にモテない僕をかわいそうだと思って欲しい」と答えているが、「そりゃ、これだけ女の子の気持ちを汲み取らないんじゃモテないよ!」と思う。

若干厳しいレビューになったけれど、『恋愛睡眠のすすめ』はつまらないわけではない。"恋愛弱者だけどキュートな男の子"を愛でたい気持ちが少しでもある女性なら間違いなくハマる。なにせ主人公を演じるのは、あのガエル・ガルシア・ベルナルだ。彼のチャーミングさが申し分なく発揮されたステファンに少しでも心惹かれたなら、ミシェル・ゴンドリーの思惑は成功したことになるだろう。

評点(10点満点)

【6.5点】キュートな映画が好きな人におすすめ。

ミシェル・ゴンドリー監督作

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