『ランナウェイズ』レビュー

I Love Rock 'n' Roll

「女にはロックもエレキギターも必要ない」なんて言われた時代があっただなんて、今となっては嘘みたいだ。

ジョーン・ジェットは、ギターとシャウトで時代を切り開き、そんな風潮を過去へ押しやった立役者だ。彼女が70年代に率いた、ガールズロックバンドの先駆け的存在ザ・ランナウェイズが残した、短くも鮮烈な軌跡を辿る伝記映画が『ランナウェイズ』である。

───1975年、ロサンゼルス。男物の革ジャンを着込む15歳のジョーン・ジェットは、ロックスターになることを夢見ていた。10代の女だけで組んだバンドは売れると踏んだ音楽プロデューサーのキム・フォーリーは、メンバーを集め始め───

ザ・ランナウェイズのボーカルだったシェリー・カーリーの自叙伝『Neon Angel』が原作で、製作総指揮がジョーン・ジェットの映画なので、焦点はこの2人に絞られている。

ロックムービーという観点で、目を引くのはやはりジョーン・ジェットの方だろう。退廃的だけど自暴自棄じゃない。やさぐれてるが、ロックには真摯に取り組む。その姿は、正に「ヒリヒリした焦燥感」という常套句が当てはまり、ロックと言うほかない。

その「これしかない」という揺るぎのない信念が胸を打つ。彼女が後にカバーした"I Love Rock 'n' Roll"がヒットしたのは、ロックを愛する気持ちが本物だったからだろう。

ジョーン・ジェットを演じるクリステン・スチュワートの演技も完璧で、ロックミュージシャンに特有の雰囲気をものの見事に表現しており、『トワイライト』のベラとはまったく違う顔を見せている。

「Sex, Drugs and Rock 'n' Roll」を地で行くツアーの様子もスゴイ。気に食わないバンドのギターにジョーン・ジェットが○○するシーンは見ものだ。そこらの女優なら日和って演じるのを断るだろう。

『アイ・アム・サム』の純真な少女から早9年、大人の一歩手前まで成長したダコタ・ファニングも、下着姿で観客を挑発するシェリー・カーリーを熱演している。

映画的な脚色が少ないのか、いささか淡白な物語のため、ロックに興味がない人には物足りないかもしれない。

しかし、時代に後押しされたロックの熱気をギュッと押し詰めた、真摯なロックムービーに仕上がっているのは間違いない。ロックとは?表現者とは?その答えの一端に触れることができる貴重な映画である。

評点(10点満点)

【7点】ロックへの理解が深まった。

ネタバレ

ロックミュージシャンを巧みに表現しているクリステン・スチュワートに比べて、ダコタ・ファニングがかもす雰囲気がどうにも良い子ちゃん過ぎるのが、観ていて初めのうちは気になった。

ダコタ・ファニングが演じるシェリー・カーリーは、ドラッグをキメていても、ローディーとトイレでセックスをしていても、どこかに品の良さを残しているのだ。

しかし、後半の展開で「なるほど!」と納得。結局シェリー・カーリーは、ロッカーではなかったのだ。彼女がザ・ランナウェイズを脱退したのは必然だったのだろう。

そういった意味で、やはりジョーン・ジェットはスゴイ。生粋の、本物のロッカー。彼女の歌う"I Love Rock 'n' Roll"には、一片の欺瞞もないのだろう。その証拠に、ジョーン・ジェットは今でも現役のミュージシャンであり続けている。だからこそ名演足り得たのだ。

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