『スプライス』レビュー

イヴの肋骨

SFホラー映画、なかでもクリーチャーものは、一部熱狂的な愛好者がいるジャンルの一つだ。それだけに、掘り尽くされた感もあるジャンルでもある。

『キューブ』で映画ファンを熱狂させたヴィンチェンゾ・ナタリが満を持して完成させた『スプライス』は、このジャンルの停滞感を打破することができるのだろうか。

───科学者夫婦のクライヴとエルサは、生物のDNAをスプライス【結合】させることを研究をしていた。研究に取り憑かれたエルサは人間と動物のDNAを使い、新たな生命体を創りだそうとするが───

結論を書くと、『スプライス』には新しい何かを感じさせるものはなかった。映画に新風を吹き込んだ『キューブ』を撮ったヴィンチェンゾ・ナタリが、長年温めていた企画の割りには凡作である。

既存のクリーチャー映画から逸脱していく予感をストーリー中盤からさせるものの、徐々に定番のプロットに帰結してしまう。結果的には、ほんのりスパイスが効いているといった程度だ。

待望のクリーチャーも、どうにもパッとしない。最近では、スペイン映画の『REC/レック』に登場した“少女”が度肝を抜く存在だった。クリーチャーのデザインには、まだまだ開拓の余地があるはずだ。

ヴィンチェンゾ・ナタリ監督作には、「『キューブ』の衝撃をもう一度!」とハードルが上がって、辛口評価になってしまう。

しかし、『メメント』で同じようにハードルをグッと上げたクリストファー・ノーランが、『ダークナイト』や『インセプション』で軽く飛び越えたように、ヴィンチェンゾ・ナタリにも『キューブ』を越えて欲しいのだ。

評点(10点満点)

【5点】突き抜け損ねた。

ネタバレ

エルサが幼少期に母親から虐待されていて、それが原因で歪んだ母性愛をいだいていることがストーリー中盤で明らかになる。エルサは、科学の探求のためだけにドレンを創りだしたのではない。自分の思うがままになる子供を求めていたのだ。彼女の母親と同じように。

ここからグッと面白くなりそうになるが、エルサとドレンの関係は突き詰めれらることなく、尻すぼみになってしまう。これがもったいない。この狂気をしっかり描ければ、ドレンの子供をエルサが身ごもるラストがもっと鬼気迫るものに感じたはずだ。

また、ドレンが自分に残された時間の少なさを感じて、なんとかして子孫を残そうとしていたことも、描き方が舌足らずで伝わりにくい。

ドレンの生存戦略が見えてこないから、ドレンと性交渉したクライヴがただの変態にしか見えない。どうしてクライヴが誘惑に抗えなかったのかを観客に理解させる必要があった。

ドレンが性別を変化させた理由は、おそらく「クライヴとの間に子供を作ることに失敗したため、能動的に性交渉できるオスになって、エルサに子供を身ごもらせるため」だろう。

こういった必然的な理由も、どう見ても飛べない羽で、自由自在に滑空するドレンの荒唐無稽さで吹っ飛んでしまう。

これらの理由から、「異種間での性交」というタブーに挑んだというナタリ監督渾身の展開も、どうにも冷めた目で観てしまった。

『スプライス』は、傑作に昇華する切欠になりそうなアイデアが含まれているだけに、もどかしさを感じる映画だった。

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