『題名のない子守唄』レビュー

人が人であるために

映画を真の映画たらしめる何か。それは、どれだけの言葉を尽くしても表せないが、確かに在る。『題名のない子守唄』は、そういった映画の真髄を発現した紛れもない真の映画として、本物に飢えていた映画ファンたちの溜飲を下げることだろう。

───北イタリアの港町トリエステに、陰のある一人の女が降り立った。彼女の名はイレーナ。やがて、イレーナは金細工の工房を営むアダケル家のメイドになるが…。イレーナは何故、アダケル家に執着するのか。そして彼女の隠された過去とは───

不安を煽るショッキングなプロローグから終盤まで、観客を巧みにミスリードしながら物語が進む『題名のない子守唄』は、いわゆるミステリー映画だ。観客は、主人公イレーナの「過去」と「目的」を手探りで推理しているうちに何時の間にかイレーナの心情に入り込むことになる。

イレーナの過去は、現代社会が抱える闇を映しだす。だが主題は社会的な問題提起ではなく、愛だ。人と人をつなぐ根源的な感情。『題名のない子守唄』は、その愛が発露するまでの道程をときには激しく、ときには寂寞に描いている。

真実の先にやがて訪れる結末は、すべてが浄化されるような赦しに満ちている。その美しさは深く温かい感動を観る者に与え、そしていくばくかの生きる糧となって心に残り続けるだろう。

評点(10点満点)

【8.5点】こういった感銘を与える力がある作品こそが本当の映画なのだ。

余談

秘密

ほぼ完璧と思える『題名のない子守唄』に於いて、本編前の「監督からのお願い」は唯一蛇足だと感じました。『シックスセンス』よろしく「決して秘密を人に話さないで欲しい」といったメッセージなのだけど、どんでん返しにすべてが集約されるタイプの映画ではないので、このメッセージは忘れて観た方が素直に楽しめると思います。

また、そんなメッセージにお構いなしに秘密をネタバレしている記事があちらこちらにあるので、鑑賞前には関連情報をなるべく見ないようにすることをおすすめします。

子守唄

劇中で歌われる子守唄は、「ウクライナの民謡なのかな?」と思って観ていたのですが、パンフレットによるとジュゼッペ・トルナトーレ監督と音楽担当のエンニオ・モリコーネによるオリジナル曲だとのことです。

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監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
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発売日:2008年05月30日
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