『パンチドランク・ラブ』レビュー

一目惚れを信じるか?

『パンチドランク・ラブ』というタイトルを見て、さぞかし酩酊感のあるドラッギーな映画なんだろうと、勝手に思い込んで劇場に足を運んだのだが、実際にはなんともチャーミングなラブストーリーだった。そもそも"Punch-Drunk Love"とは、"強烈な一目惚れ"の意味なんだとか。しかし、期待ハズレだったわけではない。それどころか私にとって、その年のナンバーワン映画になった。

プリン男(脚注)の話をモチーフに、監督・脚本のポール・トーマス・アンダーソン(本作でカンヌ最優秀監督賞を受賞)は、ハッピー・チャーム・フール・ラブ・ムービーなんて言いたくなるような映画を作り上げた。

───トイレ詰まりを取る吸盤棒を販売している、真面目で心優しいがキレやすいバリー・イーガン(アダム・サンドラー)は、姉の同僚リナ・レナード(エミリー・ワトソン)に一目惚れ。二人はいいムードになるが、ゆすり屋があらわれ───

プリン男の話のバカバカしさや、役者の多くに素人を起用していることなどが相まって、全体を覆う空気感は、ひょうひょうとした味のあるものだ。そこに時折、暴力的なシーンが挿入され、ダイナミクスを生ずる。

その空気感を支配するのが、主演のアダム・サンドラーの圧倒的な存在感だ。アメリカでは大スター。なのに、なぜか日本では無名に近いアダム・サンドラーはすごくチャーミング!非常にクセのある役なのに、アダム・サンドラーの魅力ですんなりと感情移入ができる。

ヒロインを演じているエミリー・ワトソンも魅惑的。暴力的なシーンがあって、しかもヒロインは不幸な役ばかりを演じているエミリー・ワトソン。と聞いて不安になった方、大丈夫です。『パンチドランク・ラブ』はとてもハッピーな映画。そもそも、『アメリ』はエミリー・ワトソンのために書かれた脚本。幸せな役も、ちゃんとハマってる。特にロイヤル・ハワイアン・ホテルでの、二人のキスシーンは可愛らしくて素敵。観ているだけで幸せな気持ちになる。

世界と上手く馴染めないでいる男の前に、全てを受け入れ愛してくれる女が現れる。男はその愛を受け止めるために、出来る限りの事をして、成長していく。はぐれものへ優しい眼差しを注ぐ、愛ある作品です。

評点(10点満点)

【9点】宝物を見つけた気分。

脚注

プリン男

「対象商品のバーコードを10枚集めて送ると500マイルのマイレージ、さらに早期応募特典として5月31日までに送れば1,000マイルのマイレージをプレゼント」という、ヘルシー・チョイス社のキャンペーンが1999年5月に始まった。土木技師のデヴィッド・フィリップスは、ディスカウント・スーパーで売られていた25セントのプリンが対象商品に含まれていることに気付き、3,000ドル超、約12,000個のプリンを購入。実に1,250,000マイルものマイレージ(約150,000ドル相当)を手に入れた。このことはタイム誌などでも取り上げられ、彼は「プリン男」として一躍有名人に…。これは、アメリカで実際にあった話。ちなみに、彼は本作のモデル料も手にしている。

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