『崖っぷちの男』レビュー

○○大作戦

限定された状況下での極限状態を描くシチュエーション・スリラー映画。カナダから突如現れた映画『キューブ』が、このジャンルのブームに火を着けてから、様々なシチュエーションが舞台に選ばれてきた。

棺桶、電話ボックス、老朽化したバスルーム……。

そして新たに「高層ホテルの窓の外」がこのリストに加わった。『崖っぷちの男』は、文字通り崖っぷちに立たされた男の物語である。

スクリーンショット

───元警察官のニック・キャシディは、高層ホテルの窓枠を越え、今まさに飛び降りようとしていた。大勢の野次馬が見守るなか、ニックは交渉人にNY市警の女性刑事リディアを指名するが───

基本的にシチュエーション・スリラーの主人公たちは、図らずも窮地に陥ってしまう。しかし、ニックは自らこの状況に身を置く。そう、この物語の秘密は、他ならぬ主人公が握っているのだ。

この点で、『崖っぷちの男』は、あまたの類似作品と一線を画する。

序盤は謎解きを楽しみ、中盤以降は主人公が真の目的を果たせるか否かのスリルを楽しむ。シチュエーション・スリラーとクライム・アクションを掛け合わせ、新機軸を打ち出している。

今の時代にマッチした、このハイブリッド感が本作の魅力だ。

完成度は高くない。御都合主義で、突っ込み所が満載の設定を勢いで押し通した。ただ、この勢いは中々のもので評価できる。

本作を引っ張るのは勢いだけではない。主人公を演じたサム・ワーシントンのスター性も牽引力の一つ。エド・ハリスとジェイミー・ベルも存在感を示し、脇を固めている。

『崖っぷちの男』は、シチュエーション・スリラーの発展性を提示した。主観撮影による擬似ドキュメンタリー映画が、ゾンビ映画との融合や、怪獣映画との融合で表現の幅を広げて行ったように、シチュエーション・スリラーもまた、ジャンルの枠を拡大していくだろう。

評点(10点満点)

【6.5点】もっと驚きが欲しい。

ネタバレ感想

(注) ここ以降は『崖っぷちの男』のネタバレがあります。

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主人公たちに協力する謎の中年男性がニックの父親だった。この点が、本作で唯一想像外だった。ただ、これといった伏線もなく、唐突にしれっと正体が明かされるため、あまりサプライズになっていない。せっかく父親の死を観客に信じさせたのに、もったいない。

そのくせ、ジョーイ(ニックの弟)がエレベーターシャフトに工具を落とすいかにも伏線なアクシデントが、その後にまったく繋がらない。

どうにも伏線の張り方が、ちぐはぐしている。

それにしても、一介の警察官にしては、高度すぎる計画を獄中で立てたニック。完璧に死を偽装したばかりか、ちゃっかりビルの従業員になっている父親。『ミッション:インポッシブル』のイーサン・ハント張りの進入劇を見せるジョーイとその恋人。

お前らキャシディ一家は一体何者なんだよ!

キャシディ一家が国家の陰謀を暴く、『スパイ大作戦』ならぬ『家族大作戦』が作れそうな驚きの活躍ぶりである。

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