『コーラス』レビュー

ノスタルジアの肩越しに覗く現実

「奇跡の歌声と天使の顔を持つ美少年のジャン=バティスト・モニエが主演」との触れ込みに誘われたのか、劇場内は年配の女性で埋め尽くされていた。

いつか訪れる声変わりを避けられないボーイソプラノは、束の間の白昼夢のような美しさと儚さを持ちあわせている。それはまるで煌めく少年時代の象徴のようだ。今まさにその渦中にある少年達は、その輝きの意味を理解することはない。ただ、その時代を既に過ぎ去ってしまった人々が、惜春するがごとく、まぶしげに眼差しを向けるのだ。

───物語は1949年フランス、失業していたクレマン・マチュー(ジェラール・ジュニョ)が、「池の底」という名の寄宿舎に音楽教師として赴任するところから始まる。親をなくした子供や、素行に問題があり親元を離れた子供たちが集団生活している学校で、彼は合唱団を結成する───

訳ありの主人公が図らずも問題児たちの面倒を見ることになる、ハリウッド映画では定番中の定番ストーリー。だが『コーラス』はフランス映画。全てが丸く治まり、一件落着するハリウッド流とは少し違う。幸せも、不幸せも、ありのままに描く、その正直さが物語に奥行きを与えている。

合唱団のソリストを演じるジャン=バティスト・モニエは、実際にサン・マルク少年合唱団のソリスト。「奇跡の歌声」も大げさではない彼の歌声が、本作を特別なものにしている。片や、一番の問題児のモンダンは、実際に青少年更正施設に入っているグレゴリー・ガティニョルが演じている。凄みのある風体で、存在感のある演技をしていた。二人の高いコントラストが印象的だ。

「文部科学省特別選定」の冠がついてはいるが、説教臭い部分はないし、教科書的なお堅い映画でもない。美しい少年合唱団の歌声がかもし出す、少年時代の輝きとノスタルジア。忘れていた何かを思い出す、そんな良作です。

(余談だが、グレゴリー・ガティニョルは、撮影中一切の問題を起こさなかったそうです。)

評点(10点満点)

【7点】少年合唱団に興味がなくても楽しめる。

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