『ラースと、その彼女』レビュー

いつ、大人になった?

男女がソファーに並んで座っている、一見平凡なスナップショット。しかし、よく見ると彼女は等身大のリアルドールだ。口ひげを生やした男はこちらに優しく微笑みかけている。窓の外の雪景色とは対象的に部屋の中は暖かそうだ。

映画館でふと手にしたフライヤーに掲載されていた、そのスナップショットに私はすっかり惹き込まれた。見る者の心を解きほぐすようなムードがある一枚。それは、『ラースと、その彼女』のフライヤーだった。

───雪が降り積もるアメリカ中西部の小さな町。そこで暮らすラース(ライアン・ゴズリング)は優しい心を持つが、極端にシャイで人との関わりを避けて暮らしていた。ある日、兄夫婦にラースが恋人を初めて紹介するが、彼がビアンカと呼ぶその彼女はリアルドールだった───

これほど観る前から「アタリ」の作品だと確信して映画館へ向かったのは久しぶりだ。作品の持つ魅力が溢れ出してフライヤーにそそがれているように思えていたのだけど、その予感は的中した。『ラースと、その彼女』は、胸を張って傑作だと言える映画だった。

このところ人間の善性に疑いの目を向けるような映画が溢れているが、本作は今いちど人を信じようとしている。ラースの住む町の人々は、押し並べて優しく、人形の恋人を連れた彼を受け入れるのだ。そんなのは絵空事だと思うだろうか?しかし、ラースが誰よりも優しく、また愛される人となりであることで現実味を保っている。ラースなら、あなたも認めるかもしれない。

ビアンカはなぜ現れたのか。その「理由」が徐々に明らかになると共に、ビアンカは町に馴染んでいく。そして彼女は、ラースと町の住民にとって──もちろん観客にとっても──その「理由」を超えた存在になっていくのだ。ビアンカが何をもたらすのかは、自分の目で確かめて欲しい。

主人公の恋人がリアルドールだという突飛な物語だが、驚くほどに真っ直ぐな作品だ。ミニシアター系だけれど映画マニア専用ではないので、幸運にも近隣に上映館があったなら是非足を運んで欲しい。『ラースと、その彼女』は、クスリと笑えてジワッと泣ける、この冬一押しのラブストーリーである。

評点(10点満点)

【8.5点】孤独が溶ける。

余談

本作が持つ説得力の源の一つは、ラースを演じるライアン・ゴズリングの高い演技力に在る。本作のキャスティングは絶妙で、出演者たちは皆素晴らしい演技をしているのだけど、ライアン・ゴズリングはその中でもひときわ輝いている。彼の出演作は『きみに読む物語』がズバ抜けて有名だが、『ステイ』がマイナー映画ながらも良作なのでオススメです。(賛否両論のようだけれど)

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監督:クレイグ・ギレスピー
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