『ジャンパー』レビュー

自由への跳躍

日々進歩を遂げる CG 技術は、映画に於ける映像表現の可能性を大きく押し広げた。今まで目にしたことのない想像の産物がスクリーンに次々と具現化される様は刺激的だ。『ジャンパー』もまたそういった映像が体験できる意欲作である。

───空間を瞬間的に移動できる"ジャンプ"の能力に目覚めたデヴィッド・ライスは、その力を発揮して悠々自適な生活を送っていた。しかし謎の組織"パラディン"に命を狙われるようになり───

『ジャンパー』を楽しむためのポイントは、本作が物語性よりも映像体験に重きを置いたアトラクションムービーであることを心構えに観ることだ。人生の教訓となるような深みを映画に求める御仁は、本作に爪の先ほどの価値も見出せないだろう。確かに『ジャンパー』には文芸映画のような感動はない。しかし目の覚めるような驚きの瞬間がそこかしこにある。

肝心要の瞬間移動シーンは、手を変え品を変えあらゆるシチュエーションで登場する。その描写の仕方は、周りの空間を液状に吸い込むような独特のもので生理的快感を味わえる。「格好良いショットは予告編に登場したシーンだけ」なんてことは決してない。ほぼ全編に渡って見せ場がある、出し惜しみなしの構成だ。

ヘイデン・クリステンセンのインタビューによると、今作が商業的成功を収めれば『ジャンパー』は三部作になる予定だとか。そのためだろう、謎は残るし、登場人物たちの掘り下げも足りない。批評家連中からの評価が低いのも頷ける。とは言え、敵対する組織との対決にプロットを絞り込み、上映時間を1時間28分とコンパクトに抑えてあるので、至らない点も気楽に観れば気にならない。

「もしも自分が"ジャンプ"できるようになったら」と妄想せずにはいられない掴み所が満載で上映時間があっという間に感じる力作である。

評点(10点満点)

【6.5点】予告編に偽りなし。

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