『ジェイコブス・ラダー』レビュー

誰もがその梯子を上っている

超高速で頭を左右に振る不気味な人物の映像をご覧になったことは無いだろうか?映画、テレビなどで幾度となく引用されたこのイメージは、もともと映画『ジェイコブス・ラダー』で使われた演出である。

1990年にアメリカ、91年に日本で公開された『ジェイコブス・ラダー』は、翌年の『羊たちの沈黙』と共に現代サイコスリラーの火付け役になった。しかし、アカデミー賞の作品・監督・主演女優・主演男優賞といった主要部門を独占した『羊たちの沈黙』の陰に隠されて、『ジェイコブス・ラダー』の知名度は不当に低くなっている。だが、『羊たちの沈黙』に勝るとも劣らない出来の『ジェイコブス・ラダー』は、間違いなく名作なのだ。

──夜勤明けの地下鉄で疲れて寝てしまったジェイコブ・シンガーは、ベトナム戦争時代の夢を見ていた。うなされて目を覚ましたジェイコブはそれ以降、悪夢と現実が錯綜し始め──

主人公ジェイコブを演じるのは、『ミスティック・リバー』でアカデミー助演男優賞を受賞したティム・ロビンス。独特なひょうひょうとした風体が持ち味の彼が、悪夢のように混沌とした世界を対照的に引き立てている。結果、緊張と緩和が絶えず繰り返し、恐怖が強迫観念的に映画全体を支配する。

冒頭で述べた演出だけではなく、さまざまな要素が多くの作品で引用されたので、それらを観た後では既視感がつきまとうかもしれない。しかし、「地獄に堕ちるさまを映像化したかった」と監督が語る、病院に担架で運ばれるシーンなどは、後追いでは決して手の届かないレベルに達しており、色あせない。

『ジェイコブス・ラダー』は、イノベーターとしての凄みがある、数少ない作品の一つとして、今も燦然と輝いているのだ。

評点(10点満点)

【10点】既に古典の域に達している。

注意!

公開から10年以上経っているからか、本作のオチとなる秘密を平然とばらしているレビューがネット上には多くあります。本作を未見の方が検索する際は気をつけましょう。

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監督:エイドリアン・ライン
販売価格:¥ 5,480 (参考価格: ¥ 4,104)
発売元:TCエンタテインメント
発売日:2014年11月05日
在庫状況:在庫あり
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