『ファンタスティック Mr.FOX』レビュー

野性の証明

人形を少しずつ動かして、1コマ1コマ丹念に撮影する人形アニメは、制作に膨大な手間暇が掛かるため、長編作品の数はそう多くない。ましてCGアニメが隆盛を極めている映画界では、人形アニメが占める割合は更に減っていくだろう。

でも、人形アニメならではの、手作業によって生まれるおもむきには、CGアニメとは違う魅力がある。

そんな人形アニメの醍醐味を味わえる貴重な長編映画が、ロアルド・ダールの児童文学『父さんギツネバンザイ』をウェス・アンダーソン監督が映画化した『ファンタスティック Mr.FOX』だ。

───新聞記者のキツネMr.FOXは、昔は盗みのプロだった。野生を忘れられないMr.FOXは、妻のMrs.FOXとの約束を破って再び盗みに手を染めるが───

洋服を着て二足歩行する、妙に姿勢の良い動物たちが闊歩する不思議な世界。人間たちもいるが共存はしていないようだ。メッセージ性はあるような、ないような……。元が児童文学なので、理屈は忘れて深読みなしで観た方が楽しめる。

となると、やはり物語より映像に目が行く。Mr.FOXの食事シーンやフクロネズミのぐるぐる眼など、人形アニメ特有の存在感を活かした、インパクトのある画で笑わせてくれる。実際にどんなものなのかは見てのお楽しみ。

6センチ、ときには3センチほどの小さなマペットを使ったという、人形アニメでは珍しい、かなり引いた画が多用されているのが印象的だ。ゲームの『スーパーマリオ』にインスパイアされたであろう横スクロールのシーンが面白い。そういった引きのシーンは、人形アニメを見慣れた人でも新鮮に目に映るはず。

かように、『ファンタスティック Mr.FOX』には、人形アニメの魔法がかけられている。この魔法がある限り、人形アニメがCGアニメに完全に取って代わられることはないだろう。

評点(10点満点)

【6.5点】子供より大人が楽しめる。

ネタバレ

クライマックスで突如に訪れる、服を着ず四足歩行する野生のオオカミと邂逅するシーンが、一番心に刺さった。妙なおかしみがあるけれど、なんだか切ない。

原作を未読なので、元からあるものなのか、ウェス・アンダーソンによる脚色なのかは分からないが、実にウェス・アンダーソンらしい名シーンだと思う。

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