『エミリー・ローズ』レビュー

神のみぞ知る真実

まず最初に断っておかなければならないのは、この映画は「ホラー要素のある法廷劇」であって、「法廷劇の要素があるホラー映画」ではないということ。お化け屋敷的なイベントムービーを期待して観ると肩透かしを食らうかもしれない。

───何かが焦げる匂いで目を覚ました19歳の大学生エミリー・ローズ。突然、 彼女に襲い掛かる原因不明の激しい痙攣と恐ろしい幻覚。次第に症状が悪化するエミリーに神父は悪魔祓いを施すが───

1970年代に旧西ドイツで起こった実話をベースにした、宗教色が強い法廷劇。裁判の焦点は悪魔の存在の有無。エミリー・ローズは悪魔に取り憑かれたのか?それとも病気だったのか?ある一つの出来事も、語る人によって違う映像で再現される『羅生門』スタイルで超常現象の存在の有無に中立を守り、観る者にエミリー・ローズの身に起きたことを自問させる。観客は、この裁判の陪審員の一人でもあるのだ。

キリスト教が深く関与している話なので、ある程度の予備知識、例えば悪魔の名前やスティグマータ(聖痕)の存在などを知っているほうが楽しめるかもしれない。もちろん、それらの知識がまったくなくても、エミリー・ローズを演じるジェニファー・カーペンターの好演と骨太な法廷劇で十分に楽しませてくれる。特にジェニファー・カーペンターが本作の白眉だろう。彼女の演技が素晴らしかったので、当初予定していたより視覚効果を減らしたと監督が語っているくらい。一歩間違えると滑稽に見える悪魔憑きの症状を彼女は表現しきっている。

日本ではあまり馴染みのない陪審員制度の裁判や、キリスト教の思想が軸になっているので、観る人を選ぶかもしれない。けれど、一度でも悪魔的なものの存在について思いを巡らしたことがあるなら必見の一本。あなたなら、どんな結論を下すだろうか?

評点(10点満点)

【6.5点】「怖さ」は期待しないほうが良い。

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