『クローバーフィールド/HAKAISHA』レビュー

途轍もない「何か」

合衆国国防省デジタル記録#USGX-8810-B467

これは、かつてセントラルパークと呼ばれていた"U-447地区"で回収したビデオカメラに収録されていた、暗号名"クローバーフィールド事件"当日の貴重な物的証拠となる85分間の映像である。

『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、全編が手持ちのビデオカメラで撮影されたモキュメンタリー(擬似ドキュメンタリー)映画だ。映画ファンならば御馴染みの『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(以後『BWP』)が用いたあの手法である。

『BWP』の「素人が撮った映像のみで構成されたモキュメンタリー」というアイデアは非常に秀逸だが、既存の映画の文法から大きく外れているためか賛否両論だった。「『BWP』は映画ではない」と酷評する人も多い。『クローバーフィールド/HAKAISHA』もまた、この手法を受け入れるか否かで評価が大きく分かれるだろう。

さて、『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、ただの『BWP』二番煎じではない。本作は「事件」の規模が段違いにでかい。なんせマンハッタン島が壊滅してしまうのだから!全く新しい映像体験と言っても過言ではない。手ブレの多い映像は確かに見苦しいが、臨場感が並みの映画の比ではないのだ。

そしてこの映画が興味深いのは、見慣れた光景が一瞬にして地獄絵図となる様相が迫真のリアリティで写されるのに、何故か笑えること。ニューヨークを破壊する「何か」が恐ろしければ恐ろしいほどに馬鹿馬鹿しくなる。「恐怖と笑いは紙一重」とは善く言ったものである。

貶している訳ではない。製作のJ・J・エイブラムスは「ぞっとするほど怖い多くの映像を見せ、それらを馬鹿馬鹿しくて笑える状況に置くことで、人々はセラビーを受けるのとは違う形で、心の浄化であるカタルシスを体験できるんです」(パンフレットより)と語っている。笑えるのは意図したことなのだ。

既存の価値観では語りきれない新しい映画表現。こうして映画の枠組みは広がっていくのだ。

評点(10点満点)

【6.5点】「まったくもって下らない」が褒め言葉。

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