『コインロッカー・ベイビーズ』村上龍 書評

ダチュラは何を破壊するのか?

「自分の欲しいものが何かわかってないやつは石になればいいんだ」

『コインロッカー・ベイビーズ』が刊行されたのは1980年。30年以上経った今でも本書が本屋に平積み陳列されているのは、ひとえに名作だからである。

話は変わるが、私はロックバンドのナイン・インチ・ネイルズが好きだ。ある日、知人にナイン・インチ・ネイルズを聴かせるとその人は、「こんなの聴くなんて欲求不満なんじゃないの?」と言い放った。言われた瞬間は眩暈がしたが、よくよく考えると真理をついた言葉だと気が付いた。たしかに現状に満足している人は、ロックの衝動を必要とはしないだろう。「決して満足しないこと」それがロックの核だと私は考える。

閑話休題、『コインロッカー・ベイビーズ』は、実にロックな小説だ。主人公のキク、ハシ、アネモネ、それぞれ三人に共感を覚えられない人、そんな人は現状に満足しているのだろう。悪いことじゃない。末永くお幸せに。

しかし、「足りない、まだ足りない」と貪欲に何かを求めずにはいられない人には、主人公たちが輝いて見えるはずだ。

全編に満ちている苛立ちや衝動、今にもはじけ飛びそうな感情の高ぶり。それらは、むせ返るような強い熱気となってヌルヌルと読む者を包み込む。心臓の鼓動に合わせて脈打つ熱気は「生きろ、生きろ」と語りかけてくる。生きようとして湧き上がる生命力。その輝きが照射する苦痛。読者は、いつしか自分の核と向き合うことになる。

「倒れまいとして次々に足を前に出す、全力疾走をすれば決して倒れることはない」

感じることを、考えることをやめるな。一歩前に、さらにその先へ。キクとハシとアネモネのように。

評点(10点満点)

【10点】けちを付けようがない。文句なしの満点。

映画版

米Amazon傘下の映画データベースサイトIMDbに『コインロッカー・ベイビーズ』映画版の情報が掲載されているものの、国内での正式発表はまだありません。

IMDbによると現在はプリプロダクション中で、キャストには浅野忠信さんが挙げられています。かなり具体的な情報が載っているので映画化が進められているのは間違いないようですね。

【追記】いつのまにかに、IMDbから個別ページが削除されていました。どうやら、アメリカでの映画化は白紙に戻ったようです。

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新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫)
メディア:文庫
著者:村上 龍
販売価格:¥ 961
発売元:講談社
発売日:2009年07月15日
在庫状況:在庫あり
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